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金融の元祖となったユダヤ人


■迫害が育てた金融

 中世には、弾圧を受けたユダヤ人の移住が何回も起きた。
11世紀には、十字軍やイスラム帝国分裂の影響で弾圧された中東のユダヤ人が、
ベネチア(ベニス)などに移住した。



15世紀には、スペインでキリスト教王国がイスラム王国を倒したことにともなって
イスラム王国に協力したユダヤ人への弾圧が強まり、
ユダヤ人は全員がキリスト教徒に改宗するか追放されるかの選択を迫られ、
多くが北アフリカやトルコ、ベネチアなど地中海沿岸の商業都市に移住した。
 このような移住は、たとえば以前にスペインの金融業界に属していたユダヤ人金融家が、
トルコやベネチアに信頼できる同業者がいるという状況を生んだ。
彼らはこの離散状態を生かし、遠い町との貿易決済業にたずさわるようになり、為替技術を発達させた。
さらに彼らは、貿易商人から毎月いくらかの積立金を徴収し、
船が海賊や遭難の被害にあったときの損失を肩代わりするという保険業や、
事業のリスクを多人数で分散する株式や債券の考え方を生み出した。

 一方、中世にはユダヤ人だと分かっただけで財産を没収されることがあったので、
ユダヤ人にとって自らの名前を書かねばならない記名型の証券は安全ではなかった。
そのためユダヤ人の金融業者たちは、
無記名の証券(銀行券)を発行・流通させる銀行をヨーロッパ各地で運営していた。
この技術は、やがてヨーロッパ諸国が中央銀行を作り、紙幣を発行する際に応用された。

 こうしてみると、銀行、為替、保険、証券、債券といった現在の金融業態のすべてに、
ユダヤ人は古くからかかわり、金融システムの構築に貢献したことになる。
中央銀行や株式市場ができて、ユダヤ人金融業界内部にあった金融システムを
国家が肩代わりしてくれることは、
地位が不安定なユダヤ人にとっては資産の安全性を確保できる望ましいことだった。